働く 2025-12-16

「アピールが足りない」と賞与査定で言われた話。黙ってても評価される時代の終わり

先日、同僚から少しショッキングな話を聞きました。

個人の目標数字は達成しているのに、思ったほど賞与が伸びなかった。 上司に理由を確認したら、こう言われたそうです。

「君は、アピールが足りないんだよ」

正直、最初は耳を疑いました。 成果を出しているのに「アピール」で評価が決まるのか? そんな定性的な理由で、給与という定量的な評価が左右されていいのか?

しかし、冷静になって少し深く考えてみると、「アピール不足問題」は案外、世の中の真理をついているのかもしれない、と思うようになりました。

なぜ「アピール」が必要なのか

会社組織において、個人の成果は放っておくと見えなくなります。

「成果」は「平均化」される

会社全体の業績や部署の成績が良いとき、それは「みんなが頑張ったから」と平均化されがちです。 逆に、個人の突出した頑張りも、何も言わなければ「チームの通常業務の一環」として処理されてしまいます。

「一生懸命やっていれば、誰かが必ず見てくれている」

これは美しい美徳ですが、忙しい上司や経営層にそこまでの観察眼と余裕を期待するのは、少し酷なのかもしれません。

サッカーで例えると分かりやすい

この話をサッカーに置き換えてみると、急に腹落ちしました。

どんなに足が速くて、シュート技術があるストライカーでも、 「ヘイ! パス!! ここだ!!」 と手を挙げて大声でアピールしなければ、ボールは回ってきません。

どれだけ良いポジションにいても、味方(上司や周囲)に見えていなければ、そこに選手がいないのと同じです。 逆に、多少技術が未熟でも、大きな声で「俺によこせ!」とアピールする選手には、ボールが集まり、結果としてシュートのチャンス(=評価される機会)も増えます。

会社もこれと同じではないでしょうか。

「嫌われないアピール」の技術

とはいえ、単に「私を見て!」「私がやりました!」と叫ぶだけでは、周囲から疎まれるだけです。 「痛い人」にならずに、正当な評価を得るための「スマートなアピール」には技術が必要です。

1. 「自慢」ではなく「報告」にする

「こんなに頑張りました」(感情)ではなく、「これだけの成果が出ました」(事実)を伝えること。

  • × 「めちゃくちゃ大変だったけど頑張って終わらせました!」
  • ○ 「当初1週間かかる予定でしたが、工夫して3日で完了させ、2日分の工数を削減しました」

これなら自慢ではなく、また別の機会にも再現可能な「有益な報告」として受け取られます。

2. 再現性を売る

単発のラッキーヒットではなく、「仕組みを作った」「ノウハウをまとめた」という点を強調します。 会社が評価したいのは、あなた個人の頑張りよりも、組織全体への貢献だからです。

結論:アピールしたもの勝ち(残酷だけど)

世の中は、多かれ少なかれ「言ったもん勝ち」「アピールしたもの勝ち」な側面があります。

大人しくて優秀な人が損をして、 声の大きい人が得をする。

不条理に感じることもありますが、それを嘆いていても給与は上がりません。 ならば、ゲームのルールを理解して、来年は戦略的に「アピール」していくのが賢い生存戦略と言えそうです。

最初は抵抗があるかもしれませんが、 「アピールも仕事の一部」 と割り切って、来年は少しだけ「手を挙げる」回数を増やしてみてはいかがでしょうか。


詳細情報:ビジネスにおける自己評価

キーワード 解説
コンピテンシー評価 成果そのものだけでなく、高い成果を生み出すための「行動特性」を評価する仕組み。アピールはこの行動評価に影響しやすい。
アサーション 相手を尊重しつつ、自分の意見や権利を主張するコミュニケーション方法。嫌われない自己主張の基本スキル。
可視化(Visibility) 自分の仕事の状況や成果を、周囲から見える状態にすること。ブラックボックス化を防ぎ、正当な評価につなげる第一歩。
参考書籍 「静かな人」の戦略書