働く 2025-12-20

【Web制作】「忙しいのに儲からない」からの脱却。クリエイター3人チームの黄金比率「50:30:20」とは?

「案件は途切れないのに、なぜか利益が残らない」 「クリエイターが常に修正対応に追われて疲弊している」

もしあなたの制作チームや会社がこのような状況だけでなく、「ディレクション費」をなんとなくで見積もっているなら、この記事はまさにあなたのための処方箋になるはずです。

多くの小規模Web制作会社が陥る「忙しいのに儲からない」現象。その正体は、実は「価格設定の黄金比」を知らないことにあります。

今回は、クリエイター3人規模のチームを想定し、「誰も燃え尽きずに、しっかり利益を残す」ための現実的な数字と体制づくりについて解説します。

チームで協力するイメージ

なぜ「忙しいのに儲からない」のか?

結論から言うと、「制作費」だけで稼ごうとしているからです。

多くの現場では、以下のような見積もりがまかり通っています。

  • 制作費:80%(ここがメイン)
  • ディレクション費:10%(とりあえずつけた)
  • 営業利益:10%(残ればいいな)

一見良心的に見えますが、これは「デスマーチ確定」の数字です。 なぜなら、ディレクション費10%では「ただメールを転送するだけ」の動きしかできず、要件定義不足や修正の嵐を招き、結果としてそのしわ寄せが全て「制作現場(80%)」に雪崩れ込むからです。

新しい常識。黄金比「50:30:20」モデル

健全に利益を出し続ける制作チームの粗利配分は、これです。

50:30:20の円グラフ

区分 比率 役割
制作費 50% 作る価値(技術・デザイン)
ディレクション費 30% 失敗しない設計・品質担保
営業利益 20% 将来への投資・会社のリスクヘッジ

「え、制作費が50%に減ってる?」と思うかもしれませんが、違います。 「制作以外で取るべきお金」を今まで取れていなかっただけなのです。

ディレクション費「30%」の正当性

Web制作におけるディレクション費の相場は、一般的に総額の10%〜30%と言われています。 しかし、10%と30%では提供する価値が全く異なります。

  • 10%のディレクション:連絡係、素材の受け渡し、スケジュールの線引き。
  • 30%のディレクション要件定義、品質管理(QA)、リスクヘッジ、顧客折衝、提案。

プロジェクトが炎上するかどうかは、この「30%の仕事」ができているかにかかっています。 ここを削るということは、「炎上リスクをクリエイターに背負わせる」のと同じです。 クライアントにとっても、「修正がいつまでも終わらない安い制作会社」より、「進行がスムーズで提案してくれる適正価格のパートナー」の方が、結果的にコストパフォーマンスが良いのです。

クリエイター3人を活かす「最強のチーム体制」

次に、この数字を実現するための「人の配置」です。 「クリエイターが3人いる」という前提で、最もバランスが良い体制はこれです。

チーム体制図

黄金の布陣

  • 営業:1人
  • ディレクター:2人
  • クリエイター:3人

「ディレクター多くない?」と感じるかもしれませんが、これが「静かに回る」ための最小構成です。

なぜこの人数なのか?

  1. 営業(1人)

    • 年間3,000万〜5,000万の粗利を作るなら1人で十分です。
    • 営業が増えすぎると「質の悪い案件」まで取ってきたり、制作キャパを超えた受注をして現場がパンクします。営業は「案件を取る」だけでなく「制作現場を守る(コントロールする)」役割も担います。
  2. ディレクター(2人)

    • ここがボトルネックになりがちです。ディレクター1人でクリエイター3人分の案件を回すと、確認待ちや指示出しの遅れが発生し、制作の手が止まります。
    • 「クリエイターを待たせない」ために、ディレクターは厚めに配置するのが正解です。
  3. クリエイター(3人)

    • 3人いれば、誰かが休んでもカバーし合えます。
    • ただし、「直接クライアントとやり取りさせない」ことが鉄則です。彼らの時間を「作ること」に100%集中させる環境を作れるかどうかが、会社の利益率に直結します。

「高い」と言われない見積もりの出し方

「ディレクション費30%」をそのまま見積もりに書くと、地方や中小企業のクライアントには「高い」「管理費でしょ?」と敬遠されることがあります。

その場合は、項目名を「提供価値」に変えましょう。

  • ❌ ディレクション費 → 「設計・進行管理費」
  • ❌ 管理費 → 「要件定義・構成作成費」
  • ❌ 諸経費 → 「品質管理・ブラウザ検証費」

「ただ管理するためのお金」ではなく、「良いものを作るために必要な工程の費用」であることを伝えれば、納得感は格段に上がります。

まとめ:制作会社は「工場」ではなく「プロチーム」であれ

「安くたくさん作る」薄利多売モデルは、疲弊するだけで長続きしません。 プロフェッショナルとして適切な対価をいただき、余裕を持って高品質な成果物を納品する。 そのために必要なのが、「50:30:20」の意識改革です。

もし今のチームが「忙しい割に…」と感じているなら、一度見積もりの比率とチーム体制を見直してみてください。 そこには、驚くほど健全な「本来あるべき姿」が待っているはずです。


運用モデル詳細(まとめ)

項目 内容 備考
推奨モデル 50 : 30 : 20 (制作 : ディレクション : 営業利益)
かつての常識 80 : 10 : 10 ※炎上・疲弊リスク大
ディレクション費相場 10% 〜 30% 戦略・設計を含む場合は20〜30%が適正ライン
推奨チーム体制 営業1 : Direct2 : Create3 6名で粗利4,000万〜6,000万規模を目指す
1人あたり目標粗利 800万 〜 1,000万円/年 これを下回ると経営が不安定になりやすい