働く 2025-12-25

Shopifyのテスト環境を作る3つの方法:本番サイトを壊さずに安全に開発する【2025年版】

「Shopify のカスタマイズをしたいけれど、本番サイトが壊れたら怖い…」 「新しいアプリを入れたいけど、動作確認はどうすればいい?」

EC サイトの運営において、本番環境での直接編集は常にリスクと隣り合わせです。デザインが崩れたり、カート機能に不具合が出たりすれば、その瞬間の売上が失われてしまいます。

そこで必須となるのが「テスト環境(検証環境)」です。

この記事では、Shopify で安全に開発・検証を行うための 3 つのテスト環境の作り方を、2025 年の最新情報に基づいて解説します。あなたのスキルや目的に合わせて、最適な方法を選んでください。

テスト環境を作る 3 つの選択肢

Shopify でテスト環境を作るには、主に以下の 3 つの方法があります。

  1. テーマを複製する(一番手軽・初心者向け)
  2. 開発ストアを作成する(完全なサンドボックス・リスクゼロ)
  3. ローカル環境(Shopify CLI)(プロの開発者向け)

それぞれの特徴を比較してみましょう。

特徴 ① テーマ複製 ② 開発ストア ③ Shopify CLI
難易度 ★☆☆ (簡単) ★★☆ (普通) ★★★ (難しい)
コスト 無料 無料 (パートナー登録要) 無料 (環境構築要)
安全性 △ (データは本番と同じ) ◎ (完全に別環境) ○ (コード管理に強い)
データ 本番データを使用 空っぽ (インポート必要) 本番データを使用
用途 デザイン調整、極小規模な変更 アプリ検証、大幅リニューアル テーマ開発、バージョン管理

方法 1:テーマを複製してテスト(おすすめ度:★★★)

最も簡単で、多くのマーチャントにおすすめなのが「現在のテーマを複製してプレビューする」方法です。 本番の決済機能や商品データをそのまま使えるため、本番に近い状態での確認がすぐにできます。

手順

  1. Shopify 管理画面の 「オンラインストア」 > 「テーマ」 に移動します。
  2. 「現在のテーマ」の横にある 「…」ボタン をクリックし、「複製」 を選択します。
  3. これだけで、テーマライブラリーに「コピー ~ [テーマ名]」が作成されます。
  4. 複製したテーマの「カスタマイズ」ボタンから編集を行います。

テーマ複製の操作画面

メリット・デメリット

  • メリット: 数クリックで完了。本番の商品や顧客データを使って見た目を確認できる。
  • デメリット: あくまで「見た目(テーマ)」のテストのみ。
    • 注意点: アプリの設定や「ナビゲーションメニュー」「商品情報」自体の変更は、本番データに直接反映されます。「テーマを複製したから商品情報を削除しても大丈夫」とはなりませんので注意してください。
  • 制限: 1 ストアあたり保持できるテーマは最大 20 個(Shopify Plus は 100 個)までです。

方法 2:開発ストアを作成(おすすめ度:★★☆)

アプリの導入テストや、本番データを絶対に汚したくない大規模な検証を行いたい場合は、「開発ストア(Development Store)」を作成しましょう。これは本番環境とは完全に切り離された「サンドボックス(砂場)」です。

これを利用するには、無料の Shopify パートナーアカウント が必要です。

手順

  1. Shopify パートナープログラムに登録します(無料)。
  2. パートナーダッシュボードにログインし、「ストア管理」 > 「ストアを追加する」 をクリックします。
  3. 「開発ストア」 を選択します。
  4. ストア名などを入力し、作成します。

開発ストア作成画面

知っておくべき制限事項(2025 年最新)

開発ストアは無料で通常の Shopify Advanced プラン相当の機能を使えますが、いくつかの制限があります。

  • 実際の決済は不可: 本番のクレジットカード決済はできません。「Bogus Gateway」というテスト用決済を使用します。
  • パスワード制限: ストアにはパスワードがかかっており、一般公開できません(解除するには有料プランへの移行が必要)。
  • データは空: 商品や顧客データは自分で登録するか、CSV でインポートする必要があります。

どんな時に使う?

  • 本番環境のデータを 1 ミリも変更したくない時。
  • インストールするとテーマコードを書き換えてしまうようなアプリの挙動確認。
  • ゼロベースでのストア構築の練習。

方法 3:ローカル環境で開発(Shopify CLI)(おすすめ度:★☆☆)

Web 制作会社やフリーランスのエンジニアが開発を行う場合、手元のパソコン(ローカル環境)でコードを編集し、それを Shopify に同期させる方法が一般的です。これを実現するのが Shopify CLI です。

必要な準備

  • Node.js のインストール
  • Git(バージョン管理システム)の知識
  • コマンドライン(ターミナル)の操作スキル

基本的なコマンドとワークフロー

2025 年現在、Shopify CLI(バージョン 3 系以降)では以下のコマンドが主流です。

  1. ログイン:

    shopify auth login --store [あなたのストアURL]
  2. ローカルでの開発スタート(プレビュー):

    shopify theme dev

    このコマンドを叩くと、ローカル上のファイルを使って仮のテストテーマがアップロードされ、http://127.0.0.1:9292 でホットリロード付きのプレビューが可能になります。

  3. 本番(またはテストテーマ)へのアップロード:

    shopify theme push

    開発が完了したら、このコマンドで Shopify 上のテーマを上書き更新します。

⚠️ 絶対に注意すべき「先祖返り」リスク

Shopify CLI を使う際、最も恐ろしいのが「本番コンテンツの上書き(先祖返り)」です。

Shopify のテーマ設定(カスタマイズ画面で設定したテキストや画像、セクションの並び順)は、config/settings_data.json や各テンプレートの JSON ファイルに保存されています。 もし、「本番サイト側でマーチャントがバナー画像を差し替えた」後に、それを手元に取り込まず(Pull せず)にローカルから shopify theme push をしてしまうと、マーチャントの変更作業が全て消えてしまいます。

安全な運用フロー:

  1. 作業前には必ず shopify theme pull で本番の最新状態を手元に落とす。
  2. shopify theme dev で開発する。
  3. Git でコミットする。
  4. 反映時は慎重に shopify theme push する(できれば本番テーマへ直接 Push せず、複製テーマに Push して確認する)。

どの方法を選ぶべき?

あなたの状況 推奨される方法
CSS で文字色を少し変えたい 方法 1:テーマ複製
新しいこのアプリ、動くか心配 方法 2:開発ストア または 方法 1
セクションを自作・改修したい 方法 3:Shopify CLI
本番稼働中のサイトを大幅リニューアル 方法 2:開発ストア で構築し、完成後に移行

結論

まずは 「方法 1:テーマ複製」 から始めましょう。これが最もリスクが低く、手軽な方法です。 そこからステップアップして、本格的なカスタマイズが必要になったら CLI や開発ストアに挑戦するのが、Shopify 開発の王道ルートです。

安全なテスト環境を用意して、トラブルのない快適なショップ運営を目指しましょう!